嬰寿の命水 箱根大涌谷、月日背乗大涌蛇太郎様の伝説(4)
蛇太郎様のこの伝説は、しばらくのあいだ封印されており、いつしか誰も語らぬお話しとなっておりました。
ところが、私が小学生3,4年生くらいだったでしょうか。長年私の実家を支えてくれていた和菓子職人さんに、こんなことが起きたのです。
その方は、毎朝実家の裏山にある祠を掃除していたのです。寡黙でとても真面目。仕事と釣りくらいしか趣味はない感じの方でした。
その職人さんが、突然ノミと金槌を手にして石を掘り出したのです。
職人さんはとても器用な方なので、やろうと思えばそれくらいは出来たでしょうが、未だかつてそんなことはしたこともなく、職人さん自身も驚くばかり。何かに操られるようにして手が勝手に動き、みるみるうちに石から像が浮かび上がってきたのですが、そらがこちらの蛇の像なのです。
実際に掘った職人さんも、何がなんだか分らない状態。
気がつくと蛇の形をしていた・・・そんな感じのようなのです。
職人さんは、誰に頼まれるわけでもなく、ただ素直に毎朝祠を掃除し、そして仕事に邁進する。そして一日の無事に感謝し、就寝する。
そういった地道ながらも着実な絶え間ない生き方。おそらく神様がその姿に感応したのだろうと思われます。
不思議なことに、この石の蛇なのですが、掘られた当時と少しずつ形を変えており、以前より形に動きが出てきたという評判なのです。
この裏山には、神様の使いの白い蛇がいるという伝説があります。私は一度もその白蛇を見たことはありませんが、職人さんはその白蛇を目撃したことがあるそうです・・・。
世の中には不思議なことがあります。
しかし、不思議とは不思議ではなく、純粋で素直な心に普通に起きる現象なのかもしれません。
私はかつて、修験道というものに精を出した時期がありますが、この修験道の世界、邪(よこしま)な方も多いもので、自分のビジネスや見栄のために利用する人を多く見てきました。危うく私もそちらに引きずり込まれそうになりましたが、踏みとどまって足を洗いました。私が思うに、変に霊能だとか、オーラが見えると言い張る人は実に怪しいものです。私の実家で働いてくれていた職人さんのように、素直な心、真面目に生きること、ただそれこそが尊いのだと、こういった一連の決して不思議ではない不思議を見て思うのでした。
一時期パワースポットなるものが流行り、こぞって御利益を求めて人が集まることがありました。しかし、その後日本は幸せになったのでしょうか?この国は本当に幸せに向かっているのでしょうか?御利益を求めている人の願いが叶ったのなら、不満な人は少なくなるはず・・・しかし結果は逆のような気がします。パワースポット巡りをし、御利益信仰をし、自分のことしか考えなくなってしまったから、まだまだ幸福度が高まらないのではないか、そんな気がします。
人の心が快復しなければ、日本の幸せは来ないのはないかと思います。それ故、御利益信仰がまかり通ってしまったパワースポット現象は罪が深い・・・。パワースポット巡りや、御利益求めて寺社仏閣を巡るのではなく、心を洗う、心を快復する、自分の心を見つめ直し、他人を思いやる、そういうことが本当の安らぎだと私は思います。
私も鍼灸師という職人ですので、この道に邁進したいと思います。
(このお話、まだもう少し続きます)
炭水汲(と)りて木賀の里
湧き水浄化に投じられ
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