プロの鍼灸師は痛いところに鍼をしない(2)
源保堂鍼灸院では、初診のとき、患者様にしっかりと鍼の説明をさせていただきますが、そのときに、「当院では痛いところに鍼をしないです」ということもお話しをします。
すると、「その根拠はどこにあるのか?」と問われることがあります。
正直なところ、鍼がどうして効くのかはまだ仮説の段階で、科学的な証明が完全にされているわけではありません。同様に、「痛いところに鍼をしなくても効果がある」というのもまだ解明されておらず、鍼灸師の中でもそれぞれの先生で意見が異なることもあります。
しかし、人類が鍼灸を発明してから3000年以上とも、4000年以上とも言われていますが、これまでの長い歴史的な積み重ねによる実践のなかで、「痛いところに鍼をするのではなく、健側(症状がない健康な側)に鍼をするのが良い」ということがわかっていたようです。
逆に言えば、「痛いところに鍼をする」という根拠の方こそが、示されてこなかったのです。
鍼の先には薬がついているわけではありません。また、鍼の先から超能力のような特別な力が注がれているわけでもありません。
それでは、どうして健側に鍼をするのでしょうか?
それは、健側は症状がありませんので、。つまりそこにはまだ元気が残っているからです。鍼の作用は、患者様がもっている自己治癒力を上手に使う手助ですので、元気がなくなっている患部に鍼をするよりも、元気が残っている健側を使うことが理にかなっているのです。
友達など、鍼を受けたことがある人に話を聞いてみると、「鍼をした後、立てなくなった」とか、「首が回らなくなった」いうのを聞かされた人はいませんか?こういった話を又聞きして、鍼って怖いんだと思った方もいるのではないでしょうか?
しかしそれは鍼が怖いのではなく、鍼の特性をしっかりと理解していない施術者の施術を受けることが怖いのです。患部に鍼をしないというのは、鍼灸院を選ぶ一つの基準になると思います。もちろん、それは自分の好みでもありますので、それでもやはり痛いところに鍼をしてほしいと思っている方は、痛いところに鍼をしてくれる施術者を選ぶのもありです。ここで書きましたことは、一つの基準ですので、いろいろな意見を集めながら、慎重に鍼灸院を選ぶことを願っております。