嬰寿の命水 箱根大涌谷、月日背乗大涌蛇太郎様の伝説(5)
これまで月日背乗大涌蛇太郎様のお話を書いてきました。
このお話をすると、それじゃあ「蛇太郎様をお参りに行こう!」と早合点される方も多いかもしれません。「ここはパワースポットだからお参りしに行かなきゃ!」などと思われる方もいるかもしれません。しかしそれはあまりに拙速、あまりにミーハーというものでありますので、気をつけていただきたいのであります・・・。
蛇太郎様は、あくまで眷属(けんぞく)であるということを知っておいてください。
眷属とは、神様と我々人間の間をつなげるお使いのことを言います。例えばお稲荷さんのおきつねさんや、龍神さん、はたまた天狗なども眷属に入ります。
眷属もまた異界の存在として、ときに私たちに不思議な力を見せてくれたりしますし、龍神さんを信仰の対象にしている方もいると思います。しかし、気をつけなくてはいけないのは、あくまで眷属はお使いであって神様本体ではないと言うことです。届けるべきは神様本体であって、眷属ではありません。また、眷属は神様本体ではありませんので、ときに道を外れたことをする輩がいたりします。それがはぐれ龍神や、はぐれ天狗、はぐれ狐などは昔から野孤(やこ)と称されており、誤った信仰をしていた人々はその道に堕ちてしまう危険があります。うっかりこういったはぐれ系眷属に身を委ねますと、行きはよいよい帰りは怖いということになりかねませんので、注意が必要です。
蛇太郎様は人間に生まれ変わりたい一心で修行を積んできた方なので、そういった悪巧みをするようなことはしません。しかし、あくまで眷属ですから、蛇太郎様は、自分が拝まれることに抵抗があります。やはりここは、「本体の神様をお参りください」というのが蛇太郎様の本心です。
ということで、蛇太郎様をお使いとして派遣している神様について。
その神様は、「嬰寿辨財天(えいじゅべんざいてん)」と申します。
写真向かって右から2番目の祠には「水神」とありますが、これが「嬰寿辨財天様」であり、ここの神社の中心であります。
かつて箱根はとても貧しい村でした。人が住めないくらいの貧しい村でした。
そこで先ずは飲み水が必要だということで、「嬰寿辨財天様」を社の中心として勧請したと言います。そして食べ物やお金に困らないようにということで、「正一位開運稲荷大明神」を勧請。また、当時は男衆はみな箱根山を下りて出稼ぎに行かねばならず、家族は母と子供だけになることが多かったため、子育てがうまく出来るようにと、「子母観世音菩薩(よぼかんぜおんぼさつ)」を勧請したと言います。
私が産まれた時には既に雑木林の中に埋もれてしまっていたこの三社の神社は、私の母の病気をきっかけに再発見されました。その後いろいろなご縁をいただいて、家族でお祭りすることからはじめて、蛇太郎様のことなどが次第に明るみに出てきました。未だ整ってはいないのですが、上の写真のように皆様がお参り出来るようにしております。もし箱根を訪れる機会がございましたら、ぜひ足をお運びください。嬰寿辨財天を中心とした神様が微笑んでくれることと思います。
(とりあえず、今回のお話しはこの辺りで一区切り)
天に大地に又(また)空(くう)に
残す善行世のため人のため
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