嬰寿の命水 箱根大涌谷、月日背乗大涌蛇太郎様の伝説(3)
孫三郎一行が駒ヶ岳あたりで遭遇し、撃ち殺してしまった大蛇は、資料によるとその長さは「九尺九寸九分九厘九耗」あったと言いますので、凡そ3メートルと言うことになりましょうか(長さそのものよりも、当時の単位で9が5つ並ぶところに“何か”を感じてしまう)。胴回りは「直径三寸(約9センチ)」、「顔、龍の如し」とあります。さらに、「背の部分は浅葱色(黄色い緑)」、「腹部は紅白(淡いピンク)」ということなので、いかにこの大蛇が異界の存在であったかと言うことが分ります。
では、どうしてこの大蛇はこの箱根の山にいたのでしょうか?
それは、まずこの大蛇が箱根の主(ぬし)であったということです。
そしてこの大蛇は、神様から一つの使命を受けていたというのです。
大蛇には、人間に生まれ変わりたいという願いがありました。
大蛇のその願いを受け入れた神様(嬰寿弁財天様)は、大蛇に次のような使命を授けました。
それは、富士山のとある場所から湧き上がるという、炭素だけで出来た水を汲み取り、それを箱根の木賀の里に運ぶこと。この使命を、人間に見られることなく、何十年も遂行することを命じられました。当時の箱根は貧しい村であったため、まずは衣食住を満たすために、人々の身体と精神を救うためのきれいな水が必要でした。大蛇は、嬰寿弁財天様からの使命を受けて、地道に地道に月日を重ねていたのです。
そして、ようやくその満願が叶うという前日、大蛇は孫三郎一行に見つかってしまったのでした・・・。しかも命も奪われてしまうと言う、何とも言えない不運が重なってしまったのでした。その大蛇の無念たるや、想像に難くないものがあります。
とてもとても悔しい思いをし、人々を恨んだであろう大蛇は、その後改心をし、嬰寿弁財天様の使いとなり、正式な名前をいただきました。その名前は、「月日背乗大涌蛇太郎(つきひはいじょうおおわくじゃたろう)」といいます。そして、蛇太郎様は今でも富士山麓より貴重な水を運搬し、私の実家の裏山から湧き出させては、人々の身体と精神を浄化しているわけです。
そして、名前の中に「大涌」とありますように、箱根火山騒動の中心となっている大涌谷をも守っているのもまた、蛇太郎様であります。蛇太郎様が何を意図して今回の火山活動を行っているのか、推測するしかありませんが、私個人の思いとしては、時代の転換期にあたり、さらなる人々の精神の改革が必要という要請から、箱根の温泉を改良しているのではないかと思います。この改良が進んだ暁には、きっと箱根の温泉がさらにパワーアップをし、これまで以上に多くの人々の心と身体を癒やすのではないかと感じています。
(さらにこのお話は続きます)
木賀の地(さと) 炭水運び酸炭(さんたん)の
調和を計量(はか)り最良水に
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