秋を含めた立秋の養生
8月7日は立秋でした。
まだまだ暑い日が続いておりますので、秋が来たと言われてもピンと来ない方も多いのではないでしょうか?しかし、暦は地球と太陽の位置関係で決まるものなので、感覚的なことは抜きにして、確実に立秋の位置に地球がやってきたことを意味し、確実に夏から秋へと季節が移っているのです。
いつもはこの立秋と聞いても感覚的なズレを感じるものですが、今年は連続猛暑日の記録を伸ばした後の立秋だっただけに、その日、気温が緩んだことを実感された方も多かったのではないでしょうか?まだまだ残暑は厳しいとは思いますが、こうして季節が変わっていくことを知ることは、身体にとってもとても大切なことです。
秋は、涼燥の季節です。つまり、涼しくて、乾燥が入ってきます。秋が深まる頃には、この涼と燥がピークに達していくわけですが、まだ秋に入ったばかりの立秋の場合は、まだ涼と燥はそれほど強く働くわけではありません。
しかし、だからといって侮ってはいけません。これまではどんなにお腹を出して寝ていても、寝冷えなどはしなかったはずですが、この立秋を境に、寝冷えでお腹を壊すことが多くなってきます。もし8月に入って寝冷えが顕著になっている方がおりましたら、寝ている時は適度な腹巻きなどをしておくことをおすすめします。
東洋医学の分類で行きますと、秋の色は白。このことから、秋にふさわしい食べ物は、白いものになります。また、乾燥が多くなりますので、それを防ぐための潤いの多いものが良くなります。
食材で言いますと、梨(なし)、レンコン、バナナ、リンゴ、白きくらげ、百合根、大根、蜂蜜、豆乳、ぶどうなどがいいでしょう。立秋の時期は、まだ乾燥は激しくありませんが、来たるべき本格的な乾燥のために、今から中側を充実しておくことは大切になります。
また、東洋医学では、秋の性質は「収斂(しゅうれん)」「粛殺(しゅくさつ)」と言います。収斂も粛殺も、言葉の意味だけから見ますと、ちょっと怖いものがあります。粛殺などは、粛正、殺傷という意味ですから、秋はそんなに怖い季節なのか?と思われてしまいます。
そうではなく、これは、春夏で育ててきたものを実にするために、無駄なものを削ぎ落とすことを意味します。例えば、物事が成就することを「結実」と言いますが、結実するためには、激しい練習に耐えたり、ハードワークをしたり、何かとオーバーワークにしながら鍛えていきます。そしてその結果が、実を結ぶわけです。植物などでも、春先に種をまき、夏はせっせと水をあげて成長させ、そしてそれが秋に収穫できるようになります。収穫をするために、過剰になった栄養分を、実を結ぶようにすることが秋の力なのです。
立秋の時期は、まだ夏の名残である残暑がありますので、ついつい夏の延長で栄養を摂り過ぎてしまいがちです。だんだんと気候が涼しくなっていき、代謝量も落ちてくるにもかかわらず、相変わらず夏のままで行ってしまったら、栄養過多になるので太りやすくなったり、むくんだりもします。少しずつ秋の準備をするために、これまで過剰になりすぎていた部分は、少なくしていくことをおすすめします。
また、気候も少しやわらいできますので、過剰な部分を落としていくために、軽い運動を始めることもいいかもしれません。
また、秋は肺の季節で、肺が主どる感情は悲しみです。肺が弱ると悲しみやすく、またその逆に、悲しみが肺を壊します。特に秋は肺の季節ですので、悲しみの感情になりやすかったりもします。
「祭りの後の静けさ」と言いますが、花火やお祭りなどでふざけすぎた後は、何だかちょっと寂しさを感じるもの。昼間の蝉の鳴き声から、徐々に虫の声も聴かれはじめ、センチメンタルな気分になったりもします。立秋の頃は、そろそろそうった悲しみの感情が出始める頃でもありますので、秋の養生の入口として、悲しみの感情もなるべく持たないようにしたいものです。
センチメンタルなどと書きましたが、だからこそこの時期は行楽日和でもありますし、秋が深まるとそれはそれで紅葉がきれいな季節となります。。旅行をしたり、楽しい映画を観てみたり、残暑を楽しみながら立秋を過ごしてみてください。